DX 導入事例

2024.04.22

30年以上のIT活用ノウハウで業界の成長を促す。

30年以上前からITの活用に取り組んでいたヒバラコーポレーション。金属塗装業において、これほど早くからDXに取り組んでいた会社は少ないだろう。当初の目的は、作業効率の向上であったが、自社開発したシステムや、その開発・運用過程で蓄積したノウハウをソリューションとして販売するまでに成長。その道のりと今後の展望を、代表取締役社長である小田倉久視氏に聞いてきた。
小田倉久視氏

株式会社ヒバラコーポレーション
代表取締役社長 小田倉久視氏


DXのポイント

  • DX化できる業務が何かを細分化して見極める
  • 社内のITリテラシー教育の徹底
  • AIを駆使した業務効率と品質の向上
  • 遠隔地のライン管理によるリスクヘッジの成功

業務の細分化から見える効率化の動き

1975年に創業して以来、金属塗装業を営むヒバラコーポレーションが、ITに取り組み始めたのは約30年前だ。当時、手作業で行っていた事務作業や工程表の作成などを、パソコンを用いて作成したのがはじまりである。そして徐々に作業のIT化を進め、生産管理システムを始めとする製品「HIPAX🄬シリーズ」を提供するまでに至った。

小田倉氏がまず行ったのは、業務の細分化であった。
「金属塗装といっても、受注の電話対応や伝票管理、加工手順の作成、素材の下処理、塗装など、業務は様々。その中でもパソコンを導入して、作業効率が向上する業務の選別を行ったんです。パソコンの導入に際して、現場からの不満はありました。しかし、IT化による即効性があるタスクから始めることで、便利さをすぐに体感。不満の声も少なくなっていきました」
その結果、まずは事務作業をはじめとする間接業務をITで管理するようにしたのだとか。伝票も紙で作成したものはPDFデータとして、パソコン上に保管。探す手間が1/3程度に減ったという。


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また同時期から始めたのが、技術のデータ化である。その日の気温や湿度をはじめ、塗装用剤の配合バランス、乾燥炉の温度など、業務の中で数値化できるものが何なのかを研究。その全てを職人たちに書き出させていたという。すぐには実績とならない作業だけに適当にするスタッフも多かったというが、長く続けていくうちに定着し、このデータが「HIPAX🄬」の基盤にもなっているのだ。

DX人材の育成に必要なのは「辛抱強さ」

ヒバラコーポレーションでは、自社で開発した生産管理や生産プロセスを支援する各種システムのほか、市販のノーコードデータベースによる台帳管理、メッセージングアプリなど、IT技術を多岐にわたって活用している。
しかしこれらを実現させるためには、社内意識を大きく変える必要があったという。

「業務をIT化させるということは、何か問題が起こったときに対処できるよう、作業者にはITの知識がなければなりません。そのため社内での教育を徹底的に行いました。『普段の業務が忙しく勉強する時間がない』『先がわからないのにやる意味はあるのか』など社内外問わず批判の声も多数ありましたが、DXとはすぐには結果がでないもの。辛抱強く、地道に浸透させていくことに意味があるのです」
現在では「リスキリング」と呼ばれるスキル習得の重要性を20年以上前から実践していたヒバラコーポレーション。現在も社員のリスキリングを推奨しており、セミナーや合宿への参加には会社が100%の費用を出している。そこには経営者目線で新しいビジネスモデルを生み出せる次世代の社員の育成という目的がある。DXは一度推進させるだけで終わりとはいかない。年々進化していく技術に合わせて、柔軟に対応することが求められる。そしてそれは半永久的に必要なスキルであると考えられる。そのため、次へのバトンタッチを行える環境を整えるのも経営者としての責務であると小田倉氏は話す。

「HIPAX🄬」でヒューマンエラーを最小限に

ヒバラコーポレーションの生産ラインは、センサによって管理すると同時に、データを収集し蓄積させている。センサも、コンベアの異常な振動を管理する振動センサや、汚水槽のpH値を測るpHセンサ、ライン全体の異音を感知する音センサなど、設備や工程に合わせて様々。それらを導入することで、現在どのラインのどの工程が稼働しているのかの視覚化に成功。製造スケジュールの管理にも役立っている。センサを活用したことで高価な設備に一新することなく、低コストで既存設備の見える化を実現した。
また最新の「HIPAX🄬」ではAIを活用した付加機能をサポート。各種メーター類の読み取りなど、より広範囲の監視が可能になった。


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AIの活用は多岐にわたり、現在は、塗装面の塗装ムラや液だれ、ひび割れなどをAIに検出させる技術の開発にも取り組んでいる。
「AIの活用には学習データの準備が重要なポイントになりますが、当社は長年にわたり蓄積した膨大なデータを保有しています。また、現場での実証やフィードバック、日々のデータの追加学習など『ものづくり企業』のメリットを活かすことで、精度の高いシステムを短期間で構築できると考えています。ヒューマンエラーに起因した不良の発生や見落としを最小限に抑えるためにも実用化を目指しています」

競合他社への技術提供で業界発展を目指す

金属塗装業界でDX化の先頭を走るヒバラコーポレーションは、「HIPAX🄬」のサービスを展開しはじめた。
「我々の業界はとても閉鎖的な社会だと思います。それぞれの企業が独自の技術を持ち、技術の全てを秘蔵しています。それが間違いだとは思いませんが、それだけでは業界が縮小していくだけだと考えています。技術を共有することで生まれる新技術だってあるかもしれません。だからこそ弊社は、これまで蓄えてきた技術データをクラウド上で公開しています。これによって新しいサービスが生まれたり、若手の育成に役立てたり、業界が次のステップに進むことを願っています。また『HIPAX🄬』は、遠隔地であってもリアルタイムで監視をすることが可能です。そこでこの管理システムを用いて、遠い地域にある同業他社との業務提携を推奨しています。2011年の東日本大震災を皮切りに、熊本地震や能登半島地震など、ここ数年で大きな地震がいくつも起きています。地震に限らずもしもの事態が起こった際、生産ラインは止まってしまいます。そこで安全な地域にある企業と提携を行っていれば、生産を止めずに済むのです。万が一のリスクヘッジ。その管理にも『HIPAX🄬』が役に立つと考えています」

自社の業務効率の向上から始まったヒバラコーポレーションのDX推進。今はSDGsの観点から業界を変えたいと邁進している。業界全体で行うセミナーでは登壇者として、この重要性を示唆。自社の取り組みを共有することで業界全体の進化を望んでいる。


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小田倉氏からのアドバイス

DX推進において社内への浸透は重要なファクターです。まず経営者が道筋を決めてあげなければ、社員は何をすればいいかわかりません。リーダーを立てて、全てを任せるのではなく、一緒に考えていくことが重要です。ゆっくりと辛抱強く、浸透させていくことを心がけましょう。


  • 株式会社ヒバラコーポレーション 外観
  • 【企業プロフィール】
    株式会社ヒバラコーポレーション
    本社: 〒319-1112
    茨城県那珂郡東海村村松平原3135-85
    第2工場: 〒319-1112
    茨城県那珂郡東海村村松平原3115-14(平原工業団地内)
    東京オフィス: 〒102-0072
    東京都千代田区飯田橋4-7-11 カクタス飯田橋ビル8F
    代表者:代表取締役社長 小田倉久視
    設立:1975年5月
    TEL:029-282-7133(茨城本社)
    TEL:03-6272-9551(東京オフィス)
    資本金:3,000万円
    従業員数:50名
    営業時間:8:00~17:00
    定休日:土・日・祝
    事業内容:ソフトウェア設計・開発・販売、工業塗装業
    URL:https://kougyoutosou.com/