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【2024/2/22(木)開催】
神戸市中小企業DXセミナーレポート

レポート

「データとアルゴリズムで人類を豊かにする」をテーマに、AIを用いたビジネス課題の解決やデジタル組織開発の支援を行う株式会社AVILEN。今回はその執行役員太田 拓氏をお招きし、ChatGPTや生成AIの基本から、中小企業での活用事例などを含む最新動向までをご紹介いただきました。

生成AIの基本

そもそも「生成AI」とは、簡単なテキストや画像の入力で、人工知能が自動でテキスト、画像、音声、ビデオなどのコンテンツを作ってくれるという技術です。今では本当に様々なことが出来るようになってきており、文章や画像の生成、会話に加え、膨大なデータの中から「こんなものがいいのではないか」と、提案するような働きもできます。よく「AIが仕事を奪っていく」というふうに言いますが、正しくは「AIに精通した人に奪われてしまう」です。実際我々がご支援している企業様の中でも、これまで30人ほど必要としていた作業に生成AIを導入したことで、1人2人で回ってしまうほどの効果が出てきたりしています。一番良い使い方は、80点のものを90点に仕上げたりするのではなく、10点を60点まで一気に引き上げるというものです。「ちょっとやりづらいな」と思う最初の一歩に使えば、動き出しの労力や時間を大きく削減できます。

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AIの導入には、いくつかのステップがあると思います。まずは基盤構築です。AIを使える環境を作り、実際に使える人を育成しましょう。そして、ユースケース整理をして、自社のどういったところで使えるのかを明確にしていただく必要があります。最後はこれまでの知見から、業務にAIをどのように組み込むかを考えていただく。こういったステップが非常に有効かなと思います。

ChatGPT・生成AIの可能性と問題点

生成AIの中でも特に有名なChatGPTは、日本医師国家試験やアメリカの司法試験にも合格できる知識量があり、現在もどんどんアップデートされています。

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すでに一部の企業では、ビューティーアドバイザーなどにAIをうまく導入し、チャット形式でお客様にアドバイスをしたり、問い合わせに関しても自動回答したりしています。
また、ChatGPTは日本語や英語など、どんな言語でも違和感を与えずに回答できるため、海外向けにレポートの翻訳が可能です。翻訳の方に入ってもらって2、3ヶ月の期間とコストをかけて実施することが、一瞬で可能になります。そして、非常に便利なのがプログラミングコードの作成です。作りたいことをチャットで伝えれば、それを実行するためのコードを書いてくれます。しかし、ChatGPTには、大きく分けて2つの情報漏洩リスクが存在します。
1つは、ChatGPTを提供するOpenAIやMicrosoftが、データを漏らしてしまうというリスクです。もちろん非常に強固なセキュリティを構築されていますが、万が一に備え、利用時には社内でアクセス権の管理やセキュリティーポリシーについてのルール整備をしておくことが大切です。
AI自体に内容が学習されてしまうことで、間接的に自社の情報が外部に漏れてしまう危険性もあります。特に個人情報は基本的には入力しないようにしましょう。設定変更は管理者のみができるよう一元管理したうえで、AIに学習されないような設定に変更してから活用することが大切です。

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情報漏洩以外のトラブルにも注意が必要です。
生成されたものには、著作権や肖像権などを含んだデータが使用されている可能性があります。どうしても使用したい場合は、専門家に一度調査をしていただくのがおすすめです。最近ではGoogle Chromeの画像検索なども利用できるので、そういったものを活用すれば、費用をかけることなく、自社でチェックすることもできると思います。

生成AIの最新動向

生成AIの最新動向についてもご紹介させていただきます。
世界各国で多くの動きが出てきていますが、なかでもアメリカはスタートアップ企業も研究開発に多額の資金を投資しており、Microsoftは四半期の間に1.5兆円の投資を行うそうです。中国も国家規模でプランを立てて独自開発を実施。アリババやテンセントが資金を投資しているので、また新しいサービスを展開してくるのではないかと考えています。
一方、対極的なのがヨーロッパの方ですね。ここは規制強化の方針で動いております。我々がシステムを提供している企業様の中でも、日本やアメリカでは問題がないけれど、EUの支社では使用できないという話がございました。もしも、こういった国の企業様とやり取りがある場合は、注意された方がいいかなと思います。
日本も昨年末にガイドラインが定まり、2024年2月には、政府が84億円を出資する国産生成AI基盤モデル開発プロジェクト「GENIAC」が発表されました。しかし世界的に見れば、まだまだ始まったばかりです。

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次々に開発・研究がされたことで、生成AIの得意な分野と不得意な分野も見えてきました。ソフトウェアエンジニアリングをはじめとしたテクノロジー分野とは特に相性が良く、プログラミング作業などに生成AIを導入すれば、大幅な効率化が見込めます。しかし、バックオフィス業務に関しては、業務や事業内容に合わせてどこで誰が使うのかを決め、まずは集中的に導入してみることが大切です。はじめは、デジタル化されている業務に少しずつ組み込むという形が良いのかなと思います。
逆に言えば、各担当者の役割や目的を決めずに丸投げしたり、「とりあえず使ってみろ」といった見切り発車の導入、欲しい資料を伝えれば出してくれるようなQ&A基板の独自データベースの構築をいきなり目指したりすると、うまくいかないことが多いですね。
重要なのは、業務変革を目指すリーダーの強い意志と、リスクを最小限に抑える運用ルールの整備、そして小さな成功例を積み重ねることだと思います。

DXの先にあるAIトランスフォーメーション

多くの企業様が目指されているDXには、大きく分けて3つのレベルがあると思います。
まずは、紙でやっていた業務をデジタル化するような「デジタイゼーション」。次に、デジタル化したものをローカルパソコンで使うのではなく、クラウド化してみんなで使いやすくしていく「デジタライゼーション」。そして最後が、デジタルを用いて業務を変革していく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。ここまでくると新しい需要や課題が見えてくると思うので、それに対する行動や結果を数値化できるようになるのが大事だと思います。DXの最終到達点は、その数値や結果を見て、会社や事業がどういう方向に進んでいくのがベストかを、経験と数字から意思決定できること。ただ、我々はさらにその先に、「AIトランスフォーメーション」があると思っています。これは、DXで定めた業務プロセスの中にAIを取り入れて、より効率的に動けるようにするもの。一足飛びにいくのは難しいですが、近い将来ここまで到達する企業はどんどん生まれてくると思っています。

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そのためのフローですが、まずは「これってどういう風に使えるのか」といった、リテラシーを学んでいただく必要があります。そのあとは相性の良い方、優秀な方を選んで組織を立ち上げ、PoCと呼ばれる小さなテストを実施。うまくいったものをどんどん全社に展開して、次第に大きな成果を得ていくというふうにやっていくのが良いかなと思っています。最終的にその経験や成果をデジタルデータとして蓄積し、それを使ってさらに新しいことに挑戦するのがあるべきフローだと考えています。

初期のリテラシーを得るにはセミナーを活用し、そこで出会った信頼できる方と組んで、伴走支援をしていただきながら進めるのが非常に効率的だと考えています。

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DXに本当に成功したといわれる企業は、取り組んだ企業の約16%とも言われています。そのため、「10個あるうちの1個か2個うまくいけば成功」といった気持ちで取り組んでいただきたいですね。
まずはITやAIに慣れておくためにも、今日ご紹介したChatGPTをぜひ一度使ってみてください。もちろん、本格的に導入すればリスクはつきものです。ただ、それを過度に恐れるのではなく、適切に理解した上で使用していくことが重要です。

以上、2024年2月22日に行われた「ChatGPT・生成AIの最前線」についてレポートいたしました。
本Webサイトでは、ガイドラインにて業種別DX導入の取り組みやDX導入事例も紹介していますので、ぜひご活用ください。