DX セミナー&ニュース

【2023/3/28(木)開催】
神戸市中小企業DXお助け隊・神戸市中小企業DXきっかけづくりお助け隊 事例報告会 レポート

神戸市中小企業DXお助け隊・神戸市中小企業DXきっかけづくりお助け隊 事例報告会 レポート

デジタル技術を活用して経営課題の解決や事業展開に取り組む企業に対して、DX 支援を行う神戸市中小企業DXお助け隊事業。2023年3月28日に、第一部として神戸市中小企業デジタル化セミナーを、第二部では事例報告会を実施しました。こちらでは、第二部の事例報告会の内容をご紹介いたします。

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神戸市中小企業 DX お助け隊・きっかけづくりお助け隊 事例報告会

神戸市中小企業 DX お助け隊・DXきっかけづくりお助け隊事例報告会では、伴走支援先企業4社とその担当アドバイザーより、伴走支援の様子などをご報告いただきました。

業種等 企業名 概要
1 卸・小売業 株式会社ヤマヨ山本商店 受発注システムの導入
2 介護・福祉業 株式会社 グッドケア 書類のペーパーレス管理
3 物流・貿易商社 山王物流株式会社 販売管理システムの導入による顧客サービスの高付加価値化
4 製造業 山名總鉄酸素株式会社 生産管理システムの導入による業務プロセスの発展

卸・小売業「株式会社ヤマヨ 山本商店」
受発注システムの導入

我々は神戸市中央卸売市場の中で約90年続く、豆腐を中心に展開している卸・小売業者です。経営理念は「商いの道を追及する」ことです。
弊社の強みは、社歴分のノウハウがあり、在庫管理体制が出来上がっていることです。これまでは飲食店や小学校へ卸すことが多かったのですが、コロナ禍で全てが止まってしまいました。そのため新しいことを始めなければならなくなり新商品を積極的に取り入れ、商品の改廃が激しくお客様を飽きさせないように取り組んでおります。

一方で、FAX、電話・口頭などによる受注が長年の商習慣であり受注方法がお客様によって異なることが課題になりました。そのため新商品の案内が誰に対してできているのか、また新商品が売れているのか、などが分からない状況でした。この課題をマンパワーで解決しているため社員は疲弊していきます。また、コロナ禍が終わり、通常の発注が増えてくるとさらに混乱していくことに。
そこで、神戸市中小企業DXお助け隊事務局へ相談をしたところ、複数の受発注システムをご紹介いただき、その中でも弊社の課題解決に最適だと考えて受発注システムを提供する「TANOMU」のサービスを導入するに至りました。

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現在準備段階ではありますが、既に商品の登録と得意先登録が終わっており、これからお客様に対して案内も始めていきます。お客様によっては賞味期限の猶予についても制限があるため、その管理も一括で行っています。限られた会社のリソースの中で、効率的な商売をしてもらいたいため、お客様にも一部協力してもらう形でIT化を進めています。
今後の展望として、受注から請求までの一元管理を目指しています。そして効率化された時間を使い新規得意先開拓、新商品発掘、経営の意思決定精度を上げることを考えています。

中村アドバイザー:DX の本質には、経営者の方のマインドも非常に重要です。株式会社ヤマヨ 山本商店の山本社長は最初、そのマインドは明確にはありませんでした。しかし我々が支援していくなかで、すごいスピードで変わっていき今に至っております。実態として、食品卸売業の特に小規模事業者の典型的な業務課題は受注業務にあります。しかし半分以上の取引先は個人店であり、受注業務のデジタル化は長い間改革がされてこなかった業務領域です。
ヤマヨ山本商店様もFAX、電話での受注がほとんどで、送受信の確認、受注ミスのリカバリー対応などが日常茶飯事化しておりました。そのため受注システムの導入支援から進め、色々なシステムをご紹介し山本社長と比較をする中で、個人事業者向けの「TANOMU」を導入することとなりました。検討段階では打合せを密に行い、正しいIT導入プロセスの支援として、システム機能とシステム要件の突き合わせの実施を支援いたしました。
DX成功の鍵は、古い商習慣との戦いであるという意識を持つことが重要であり、ヤマヨ山本商店様の事例はその点でとても共感を受けた事例でした。

介護・福祉業「株式会社 グッドケア」
書類のペーパーレス管理化

弊社は2015年に設立して、事業種別福祉用具、訪問介護、居宅介護支援、訪問看護の4つの事業を行っています。介護保険を使って福祉用具をレンタルするお客様が多い関係で情報の管理が重要になります。またFAXでのやり取りも多く、紙の整理が出来ていませんでした。そのため、今回のテーマである「ペーパーレス化」に踏み切りました。

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まずクラウドストレージの「BOX」のサービスを契約して、基本的に情報をクラウド上に保存する方針に変更。また利用者様の情報を50音順に整理することで探す手間が軽減しました。FAXについては、インターネットFAX「MOVFAX」を導入し、メールのようにFAXをデータで管理できるようにいたしました。私達は外に訪問で出ていることも多いため、タブレットなどで外からでも届いているのが確認できるのは、とても助かりました。
さらにこれからの話ですが、福祉器具や道具などの在庫管理は「Airレジ」を利用して、クラウド上で個数や値段、仕入れ値などの管理を可能にいたします。
これまでは日常業務の忙しさを理由にこのような取組みを後回しにしていましたが、1枚のDMを見たことをきっかけに今に至っています。コストをおさえた中でもできることはありますし、自分の中でできることを考える習慣ができる伴走支援は、コンサルタントに相談するよりも現実的な成功体験につながると考えています。

中山アドバイザー:これまでグッドケア様はほとんどITツールを使っていませんでした。そこで業務の効率化を重点的に行い、デジタル化の一歩を進めていこうかなと考えました。また小さな成功がどんどんとやる気を起こし、次の原動力になっていくと思いました。全ての紙ファイルをデータ化することは難しいため、データ化しやすいものを選択。それがFAXのデータ化でした。それから在庫管理に、といったように段階的にIT化を進めていくことがDXの成功につながっていくと考えています。

物流・貿易商社「山王物流株式会社」
販売管理システムの導入による顧客サービスの高付加価値化

弊社は、1993年に神戸に本社を構え、2014年には沖縄事務所を設立した貿易の物流会社です。メインの事業は国際物流の手配で、海上コンテナや海上の混載貨物で在来線などの手配を東南アジアを中心に行っています。もう一つ、「海峡環境改善」をテーマに産業廃棄物をリサイクルして製品化しています。
弊社の強みであり課題は、マンパワーの強さです。精力的に活躍してくださっている従業員様ですが、この人たちがいなくなってしまうと何もまわらないのではと考えました。そこで第一として、販売管理システムの導入に踏み切りました。現在のシステムは20年ほど前に作ったもので不具合も多くなっていました。しかし新しい販売管理システムを導入するのにも、初期コスト500~2000万円、ランニングコストが10~30万円と、大手向けのものばかりでした。諦めきれずに神戸市中小企業 DX お助け隊へ相談したところ、いろいろな会社様を紹介してくださり、合計10社くらいにお見積りを出していただきました。

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まだ本稼働にまでは至っていませんが、初期費用とランニングコストの明確化に補助金をしっかり活用し、社員への周知のための導入リーダーの選出についても相談に乗っていただきました。実際の行動としては、各業務メンバーとの打ち合わせ、業務ポジションの理解、導入後の社内反応とシステムのギャップを埋めるため古いシステムと比べすぎないことを徹底して取り組み、プラスのイメージを会社全体に浸透させていっています。
DX化については、3年間で販売管理システムや会計システムを導入し、クラウドベースの書類管理を実施して業務の効率化を図っていく予定です。特に貿易取引に関連する書類をデジタル化することで業務を簡素化し、その効果を顧客サービスの向上として還元することに重点を置いています。また、今後の展望として、マーケティングオートメーションを活用した営業戦略や、社内外のDX推進を通じて売上と利益の増大を目指しています。

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奥澤アドバイザー:全国で実施されている専門家による伴走支援において、提案を受けて実際に導入した企業様というのは、約1〜2割程度といわれています。そんな中で約1年にわたって導入にまでこぎつけている山王物流様は希少な事例であるといえます。山王物流様は拠点が2箇所にあり、密なネットワークが築けていないことが課題でした。また現状の基幹システムの不具合も改善すべき点でした。通常ですと初期コストや運用コストは多額の費用がかかってしまいます。そこで費用をおさえた形で導入を進めるため、まずフロント業務、バックオフィス業務のどこに課題があるのかを考えました。すると一番は顧客対応である案件管理や販売管理に問題がありました。そのため、その部分を改善できるシステムを選定していきました。全てを変更しようとすると莫大な費用がかかりますが、一部システムであれば費用を抑えられます。このように、必要なものの取捨選択が重要なポイントになりました。また導入後の社内周知についてもしっかりと対応できるように打ち合わせを密にとっていきました。

製造業「山名總鉄酸素株式会社」
生産管理システムの導入による業務プロセスの発展について

1924年に創業し、油圧ポンプや油圧バルブの加工など製造業のほか、産業用高圧ガスの販売を行っております。
弊社が導入したのは、生産管理システムです。弊社では、約10年前に「TECHS-BK」 という生産管理システムを導入し、今現在も使ってきています。しかしこのシステムでは、生産計画や在庫管理が機能せず、Excelを用いて管理している状況です。またサーバーの更新時期も近付いており、他の生産管理システムの選定も視野に今回の支援をお願いしました。支援の中で取り組んだことは、現状の生産フローの作成、RFIを作成し情報収集の絞り込みを実施、生産管理システムメーカーとの打ち合わせを行いました。デモ機を使用し、最終的にどのシステムを導入するか決定するところまで現状進めております。
RFIの作成では、 生産フローをもとに、欲しい機能の洗い出しを行いました。元々 RFI という言葉も知らなかったのですが、アドバイザーにご支援いただき、資料の作成を行うことができました。そして、作成したRFIは選定対象である5社に回答いただき、その内容を元にシステムの評価をしました。最終的には「TECHS-BK」の継続に決定し、「このシステムをもっと使いこなそう」という方向に変わっていきました。今まで使ってこなかった機能を使うことで、課題の解決につながると、今回の支援を通じて知ることができました。高級なシステムに費用を掛ければもっといいものを導入できますが、それを使いこなせるかはまた別の話です。そのため今あるものを最大限に引き出すことが重要なのだと気づかされました。今後の展望として、営業の生産性向上に向けてDX化による受注拡大が出来たらと考えております。

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奥澤アドバイザー:山名總鉄酸素様は、新システムの導入を検討した結果、従来システムの新バージョンを活用することになった珍しい事例です。今回は、日本の製造業の特徴である受注生産と見込み生産が混在している企業でありました。そのため、その両方を管理できるシステムが必要でした。そのシステムは約20種類とあまり多くなく、「RFI」「RFP」を行い自社にあったシステムを選ぶようにアドバイスしました。 どのような業務でどのような機能が必要なのか、一つひとつ洗い出して判断していくことが重要です。実はこれらの作業は DX 化の非常に重要な一面であり、自分たちの業務を見直すきっかけになるのです。普段の業務の中では、なかなか見直す機会がないこのチャンスをシステム導入を行うことで副産物的に考えられるということを覚えておいてほしいです。

以上、2023年3月28日に行われた神戸市中小企業DXお助け隊・きっかけづくりお助け隊 事例報告会の様子について概要をレポートいたしました。
本Webサイトでは、ガイドラインにて業種別DX導入の取り組みやDX導入事例も紹介していますので、ぜひご活用ください。