DX セミナー&ニュース

【2023/12/22(金)開催】
中小企業のDX人材育成に関するセミナー レポート

中小企業のDX人材育成に関するセミナー レポート

中小企業診断士でありお助け隊アドバイザーの左川 睦子氏からDX導入による人材育成について、お話しいただきました。また、ウィズティ・コンサルティング代表の谷口 重樹様より、経営からの視点の重要性についてもお話しいただきました。

「DXで会社を変える」

DXによってどのような効果が得られるのか、また中小企業において必要なDX人材とはどのような人材なのかを、大きく3つに分けてお話しします。

まず1つ目は「DXとは何なのか」。DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。その定義は、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスプロセスを変化するとともに、 業務そのものや組織プロセス、業務文化、風土改革し、競争上の優位性を確立することです。

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これをもう少し細かく見ていきますと、3つの段階があります。
ステップ1が「デジタイゼーション」。紙でやっていたものをファイル、電子ファイルにしたり、ネットにつないでみたり、アナログのデジタル化という段階です。
ステップ2が、「デジタライゼーション」。業務プロセスを自動化したりシステム化するなど、ビジネスプロセスのデジタル化のことです。
最後のステップ3が「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる、ITやデジタルを使い、そこから生まれたデータを活用して、新しい価値を生み出す段階です。これらをまとめてDXと呼ばれていることが多いようです。
企業の皆様が実現したいのがX(トランスフォーメーション)であり、D(デジタル)はあくまで手段です。自社が10年後、20年後も存続するためには変わることが必要です。そのためのXなのです。そしてそれを推進していく人材が必要になります。

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では2つ目のお話しは「ITシステム導入で何が変わるのか」。まずITを使うことで起こる変化や効果は、ITで業務の効率化を行うと生産性が向上することです。業務の効率化というのは非効率な状況にある業務やプロセスについて、 無理・無駄・ムラを排除や改善して効率よくすることです。生産性の向上は、人、物、情報、金などをより少ない資源で多くのものを作り出したりやサービスを作ったりしていくこと。つまり業務の効率化は、生産性向上のための施策の一つになります。
そしてIT化を進めるとデータの蓄積が可能なため、そのデータを活用しデータから知見を得ることで業務効率化がさらに進んで、生産性が向上されていきます。しかしITシステムを入れただけでは、変化や変革は起こりません。それを使う人が重要です。

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最後のお話は「中小企業に必要なDX人材とはどういう人材なのか」。2023年春に出た中小企業白書の数字によると、2019年コロナ前は小さな企業ではデジタル化が進んでいませんでした。しかし2022年時点では非常に増えています。しかし従業員規模別に見た場合、小さな企業ほどデジタル化の取り組み段階が進んでいません。その原因で最も多いのが費用面。次に推進できる人材の不足が上げられています。それほどDX人材の確保が重要なのです。
DX人材やそれに求められる行動は、まず変化を求める意欲、変化を恐れない気持ちです。どうしても会社の中にいるとうまくいっている前例踏襲を行いたい気持ちがでてきます。しかしそれを変える気持ちや行動が大事です。次に主体性。「誰かが決めてくれる」「誰かが考える」のではなく、自分で考えて課題を決めて解決していく、そういう主体性が必要です。新しいことに取り組む意欲や興味を持つ好奇心もあるといいでしょう。4つ目は、周りを巻き込む力を持っていること。デジタル化の推進は一人では行えません。最後の5つ目は、最後まで諦めずに少しずつでも進められる人です。ITシステムが導入されたとしても過ぎに効果が出ないこともあります。そこで腐らずに進められるかが重要なのです。
そして、DX人材に必要なマインドセット。これまでの前提や慣習にとらわれず、データやデジタル技術を活用して、組織、プロセス、企業文化などを変革しようという思考や取り組みが自然と生まれる心理状態を持った人材を育てなければなりません。

「DXで会社を変える」経営の視点

皆様の中には「DXになぜ経営視点なのか」と疑問を持つ方もいらっしゃると思います。しかしながらDXを突き詰めると、経営の視点はとても大事で今後のDX推進にとても役立つと考えています。DXとは、簡単にいうと企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルなどを変革して競争優位を確立することです。ビジネス環境全体の変化を把握しビジネスモデルなど企業を変革していくことは、経営戦略を策定し実行していくことに類似しています。つまり経営の視点が重要になります。

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次に経営の視点には、4つの目を持つことが重要です。それは魚の目、鳥の目、虫の目、コウモリの目です。
魚の目とは、魚が潮の流れを読むように、世の中の流れを幅広く把握することです。実際は企業に影響を及ぼすマクロ環境(政治、経済、社会、技術など)の変化を分析します。2つ目が鳥の目です。鳥が高所から見下ろすように、広い視野でビジネスを把握することです。実際はお互いに影響を及ぼす企業のミクロ環境(顧客、競合、自社)の関係性を分析します。3つ目の虫の目は、虫が地上で近くを見ているように、細かく状況を把握することです。実際は、ミクロ環境(顧客、競合、自社)のそれぞれの状況を詳細に分析することを指します。4つ目のコウモリの目は、逆の視点を持つことです。具体的には業界の常識を疑うこと、ピンチをチャンスに変えられないか考えることなどです。コウモリの目は必ず必要なわけではありませんが、何かに行き詰まったときなどに使用すると効果的です。

ではこれらを使い、ビジネス環境全体の変化を把握した上で、ビジネスモデルの変革について、具体的に考えていきましょう。

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まずビジネスモデルとは、事業の仕組みのことで次の4つで構成されます。① 誰に、➁何を、➂どのように提供し、➃どう儲けるかです。①の「誰に」はターゲット顧客のことです。②の「何を」は価値のことです。③の「どのように提供し」は自社のプロセスや強みの活用になります。④の「どう儲けるか」は収益モデルになります。それぞれを分析し検討することで、ビジネスモデルの方向性を決めて、変革を行っていくことになります。
皆様も自分の会社のビジネスモデルをこの4つの構成要素で記述していただければ、実際の感覚がつかめやすいと思います。変革しなくても現状はどうなっているのかを一度書いてみることは、すごくいい勉強になると思います。今後のDX推進に活用していただければと思います。

以上、2023年12月22日に行われた中小企業のDX人材育成に関するセミナーについてレポートいたしました。
本Webサイトでは、ガイドラインにて業種別DX導入の取り組みやDX導入事例も紹介していますので、ぜひご活用ください。